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TAYLOWx山田岳彦

VOL.1

TAYLOW

the原爆オナニーズ

山田岳彦

レコードショップ FILE-UNDER 店主

the原爆オナニーズ

TAYLOW

山田岳彦

レコードショップ FILE-UNDER 店主

89年、名古屋クラブクアトロは渋谷に次ぐ2番目のクアトロとして、名古屋市中区栄に誕生。ストリートカルチャーを中心に、良質で高感度な音楽を発信し続け、名古屋の音楽シーンと共に歩んできました。2019年の今年、30周年を迎えるクアトロ。過去と現在をしっかりと見つめ、そして未来を目指して歩んでゆくにあたり、スペシャル・トークを3号に渡って連載します。第1回は名古屋の音楽シーンをステージ・客席と両方の視点で見つめる、the原爆オナニーズのTAYLOW。そして、TAYLOWとも旧知の仲で様々なイベントやコンピレーションアルバムを企画する、レコードショップFILE-UNDERの店主の山田岳彦の二人による対談です。二人の音楽ヒストリー、目に映った名古屋の音楽シーン、そしてこれからのことをじっくり語ってもらいました。
TAYLOW:観客のキャパシティーで考えるとクアトロがオープンする前は、ElectricLadyLand(大須)、HUCKFINN(今池)、ユッカ(今池)とかで最大200名。そこに500名キャパのクアトロができたということで、名古屋にとって良かったんじゃないかな。あと、できたタイミングとしても、日本のロックバンドが現れてきた時期とマッチしていた気がする。どこでライブを演るかという選択肢が増えたのはバンドとしても有難かったね。クアトロは今、東京・大阪・名古屋・広島にあるでしょ?日本のメジャーバンドでもツアーで4都市押さえられるのはメリットがあると思う。2010年以降はまたライブハウスも増えていて、K.Dハポン(鶴舞)とかRipple(鶴舞)というもっと小さいキャパのライブハウスができたんです。あとはスタジオライブというような新たなスタイルを考えたり。だから今何か表現したいと思っている人は、色んな場所とスタイルがあるんですよね。ただ、底辺は広がっているんだけどシーンとしてのうねりのようなものはなかなか見えてこない。

TAYLOWx山田岳彦

TAYLOW:今はCDやレコードが売れず、配信にかなり偏っている。ただ20年後、30年後でもモノが残っていれば聴けるんだよな。この「リサイクル」っていうのは音楽にとって大きなことだと思う。原爆オナニーズの1stはロットナンバーが記してあって、どこに流通したものか分かるようになってる。30年後にアルバムを手にした人が聴いて「これいいな」って感じてくれるといいなって思ってたの。やっぱり僕は音楽をモノとして残したい。例えば1967年に出たロックのアルバムがある。するとその当時ってどんな時代だったんだろうなって想像するわけです。そういう社会学的な視点も含めて音楽だって考えたいの。でも山田君のような店があるのは、名古屋にとって本当に財産だと思う。扱っているジャンルも広いし。
山田:ネットショップや配信の売り上げを考えると、ジャンルを絞った店作りになりがちだと思う。でもうちの場合はインディー・ロックをベースにしているけど、フォークからノイズまでザッとある感じなんで。若い子達の音楽の聴き方も偏っているのは感じる。アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンにハマっているっていう子がいたりするけど、アルバムは聴いていない。Youtubeで観たあの時のライブがいいとか、メンバーのサイドユニットのアレがいいとかメチャ詳しい。ただそこからなかなか広がっていかない。だから若いお客さんとなるべく会話がしたいんだけど、滞在時間が短かったりする。20代と50代の世代間ギャップをヒシヒシと感じます(笑)。だからもっと若い世代がショップをやってくれると、若い者同士で広がっていくだろうなとは思うんです。あとは、洋楽を一切聴かないという子が、私たち世代より多い気がします。仲間外れにされるとか(笑)。
TAYLOW:昔でも「あいつはパンクを聴いてるから近寄っちゃいけない」って言われたもん(笑)。
山田:うちのお客さんの印象ですけど、日本のバンドの中でもジャンルを絞っている感じはします。インディーポップ、シューゲイザーだけとか。
TAYLOW:でも日本のバンドだけでも、海外に手を伸ばす余裕はないんじゃないかな?今このFILE-UNDERにある日本のバンドのCDだけでも十分楽しめるし、名古屋のバンドでも聴けないジャンルは今ないんじゃない?
山田:街が狭いからかもしれないですが、色んなジャンルのバンドが混在しているのは感じます。TAYLOWさんは以前「UndergroundRomance」(1986)っていうコンピレーション・アルバムを企画しましたよね。あれはどんなコンセプトだったんですか?
TAYLOW:コンセプトはハードコア・パンクではないもの!その当時はハードコア・パンクを出せば売れる時代だったんですよ。その中で名古屋のインディー系バンドで面白いのを集めてみたの。割礼や古事記をみんなに聴かせてみたいなと。名古屋のバンドはなかなか外に出ていかないから、名古屋にもアンダーグラウンドでグツグツやってるアクの強いロックバンドがいるんだよって。あとは名古屋でも自由闊達に動けるんだよって知らせたかった。名古屋って結局狭いから、最初に偏ったイメージを作りたくなかったし。
山田:そのグツグツした感じがそれ以降今まで続いてきていると思う。お店としてもその感じは念頭に置いているんです。僕も「UndergroundRomance」に習って東海エリアのバンドの曲を集めたコンピ「RIPPLE」(2012)を出してまして、ジャンルも色々で。
TAYLOW:今のバンドのコンピをまた誰かが作らないとね。一回作った人がまた作ってくれると思っちゃってるんだよね。そうじゃなくて、D.I.Yの精神を引き継いで誰かが立ち上がって欲しい。みんなで考えて作るのって楽しいじゃん。

TAYLOWx山田岳彦

山田:音楽との接し方がだいぶ変わってきているのは実感する。5年後の自分の店の姿が想像できない。
TAYLOW:そう考えると、逆にライブの価値が高まってくるのかな?体験型の音楽。僕らが「スマッシング・パンプキンズよかったよな」って今だに言えるように。イギリス・アメリカで3,000人くらい集められるバンドが、クアトロのキャパで同じテンションで演るんですよ。そりゃもう幸せですよ。配信でもCDでもレコードでも音楽を聴いて、それをライブという同じ場所で同じ体験ができるわけです。ライブ体験は今も昔も等しくできるわけです。
山田:ライブの現場で価値観とか常識が覆ったという体験は何度もしています。クアトロはデパートの上だから安全だしね(笑)。

Interview&Text/福村明弘
Photo/多和田詩朗

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