ジェイムス・ブレイクの出現とその予期しない影響によって注目されるポスト・ダブステップの行方。
細分化されたリズムの、ズレを孕んだビート感、
何層かのレイヤーから織り成す、
そのオズスキュア=不明瞭ともえいるサウンドのテクスチャー=質感、
まさに 揺らいでいる 音楽の魅力を感じ取ることができる。
これまでも様々なシーン--L.A.ブレイクビーツ、ベルリンテクノ、エレクトロニカ、グライム、ヒップホップ--とリンクした複合的な動きをしていたが、
彼の登場によってまたネクストフェイズ(またはメジャー/一般化)に移行していきそうな気配だ。
今まさに変わりつつあるサウンドの流れを知ることが出来るコンパイルしたCDがいいタイミングでリリースされている。
ダブステップを進化させてきた重要人物
SCUBA率いる
ホットフラッシュ・レコーディングスの
「BACK & 4TH」」(HOTFLUSH/P-VINE)だ。

ジェイムス・ブレイクとも繋がりがあり、The XXやFoalsのリミックスで話題に、デビューアルバム『CROOKS&LOVERS』を10年にリリース、
ミニマルやエレクトロニカ、インディともクロスオーバーした絶妙なハイブリッド・サウンドで、幅広い層に受け入れられ、所謂"ポスト・ダブステップ"を象徴することになった
Mount Kimbie、

ハウスやテクノの現場でも人気の
Joy Orbisonといったアーティストを輩出してきた話題のレーベルで(ジャイルス・ピーターソンもベスト・レーベルに選出)、このコンパイルにはMount Kimbieの初期名曲
「Maybes (James Blake remix)」も収録、是非チェックしてもらいたい。
ベテラン
Boxcutter、
NYのダブステッパー
FaltyDL、

テクノ寄りのサウンドの
2562のリミックス作など、

ダブステップ以降の音に踏み込んでいる新作を最近リリースしたばかりのアーティスト達も収録している。
まだ無名だったジェイムス・ブレイクが10年にリリースし、注目されることになった3枚のEP
「Air and Lack Thereof」「The Bells Sketch」「CMYK」は現在CD化はされていないが、配信や探せばまだ12inchでも、そのダブステップ以降のビートとサウンドの進化の過程を聴く事が出来る。
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サイトそのことで、ある意味では期待を裏切った彼のファーストアルバム
「James Blake」の登場がもたらしたであろう、今はまだ予測できない期待にみちたシーンへの影響と可能性に触れることができると思う。
JAMES BLAKE自身は、例えばジャスティン・バーノンのソロプロジェクトである
BON IVER(ボン・イヴェール 注目の2ndがJagjaguwar から6月にリリース)
と比較されるように、シンガーソングライターとしての期待も高まっているし、彼自身も音楽的背景にはソウルやゴスペルがあり、エレクトロニクスの中にあっても人間味のあるサウンドを志向していくようだ。
7月になってJAMES BLAKEと同様、新作の待たれていた
SBTRKTがリリースされた。
こちらは近年のUKガラージ/ダブステップ/UKファンキーの潮流への洗練されたアプローチ。
ジェシー・ウェア他シンガーをフィーチャーした曲も多くUKソウルなアルバムに仕上がっており、これからのポップフィールドへの見本のような かなりのサウンドクオリティ。
またシカゴハウス、デトロイトテクノ、アシッドハウス的楽曲には、90年代初頭へのオプミスティックな憧憬があって個人的には楽しめるし、こうした傾向は最近アリなんだなと思った。

FOURTETやJAMIE XXとともに FUJIROCKに出演します。
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先の
SCUBAが比較的テクノ/ハウスの影響下(現在はベルリンで暮らしている)にあるのに対して、
UKアンダーグラウンドのベースカルチャーの重要人物は
Kode9 になるだろう。
日本にもDJツアーで来日しているが最近では
SonarSound Tokyoにも出演した。
そして4月に自身が主宰するレーベル
Hyperdubから5年ぶりとなるニューアルバム
『BLACK SUN』を
KODE 9 & THE SPACEAPE名義でリリースした。

サウンドへの探求から、UKファンキーまたデトロイトテクノやシカゴハウスにまで接近していった近作はもはや"ダブステップ"という言葉ではおさまらない内容だ。
しかし、大学教授としての顔を持つKode9=
スティーヴ・グッドマンによる、
都市における"アフロ・ディアスポラ"
という視点からみれば、すべてが繋がっていく、そのもうひとつの物語、
---黒い太陽のあがる反転した世界--
が語られる傑作だと思う。
レーベル
Hyperdubは、UKガラージや2STEPから派生していくダブステップシーン初期から活動しており、主宰のKode9がオリジネーターとも云われる所以だ。
08年にマーキュリープライズにセカンド
『Untrue』がノミネート、
かねてからエレクトロニクスミュージックに傾倒していた
THOM YORKEのソロ作でのリミックス、
FOUR TETとのコラボレーションも話題になり、ダブステップというジャンルを一般的にも認知させることになった
BURIAL 。
そのダークでメランコリアな音像は、例えばMassiveAttackやPortisheadに求めらるものを よりディープにしたかのようだ。その空間性のあるサウンドにJames Blakeも影響を受けている。
The Bug=Kevin Martinの超へヴィーで最高なダブユニット=
King Midas Sound、

メランコリアでオルタナな作風で人気の
Darkstar (新作はWarpから予定)、

8ビットな異端児 ZOMBY
表示レイブからエレクトロニカまで作風も様々で、それもなげやりに未完成だったり、一風変わってたり、耽美だったり、メランコリックだったり、、、しかし魅力的だという、つかみどころのなさ。
(そんな彼がなんと4ADと契約、『DEDICATION』が7月リリース予定。収録の 「Things Fall Apart」では
Animal CollectiveのPanda Bearのヴォーカルがフィーチャー)、

女性DJ/プロデューサー
Ikonikaや
DV、
グライムのドン
TERROR DANJAH 、
フライングロータスとも交流のあり、7月に新作『SAM BAKER'S ALBUM』がBrainfeederからリリースされる
Samiyamといった様々なアーティストを輩出している。
Samiyam、その悲しみも楽しみもなくイルに撚れたビートとシンセフレーズ、
その酩酊的フューチャーサウンドはたまらなくヒプノティックだ。

*また別ですが、L.A.関連ではついにRAS-Gの「DOWN TO EARTH」が8月リリース。
SUN-RA的COSMICで、土着でロウなブレイクビーツ。お蔵入りがやっとのリリース。

レーベル
Hyperdubは現在もシーンの牽引していっており、ある意味でトレンドセッターでもある。
BURIALやKode9自身のアルバムで、ディープな漆黒のダブステップの世界を提示してからは、
08年~はテクノやエレクトロ、LAブレイクビーツなどに接近したダブステップの多様性と可能性を、
10年~はUKファンキー(ミニマルテクノ的でいて、アフロ~カリビアンのソカの混合的サウンド)なノリの作品を生み出している。
Kode9としては、Hyperdubは
「電池を舐めたときに ビリっとするあの感じ」
のするサウンドをリリースしていきたいようだ。
よくニュアンスがわかるコメントだと思う。
そうした進化や変遷を一望できるのが
『Hyperdub:5 Years of Low End Contagion』。
09年までの5年間のレーベルコンピレーション。多彩な才能が犇めき合っており、あのFLYING LOTUSまで収録されているのは象徴的。

また10年にはKode9が人気ミックスCDシリーズである
DJ Kicksに登場、サービス満点にUKファンキーやエレクトロ、グライムなど旬のサウンドをガンガンミックスしているので理屈ぬきに楽しめる。

そして ついに BURIAL が シングル
「STREET HALO」で活動再開。 期待はつのるばかりだ。
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こうしたダブステップの流れには、先のTHOM YORKEのようにロックフィールドからのアプローチもある。
日本でもTORTOISEやMICE PARADE等と並んで人気のある
FOUR TET(インド系イギリス人Kieran
Hebdenのユニット)は 90年代後期からエレクトロニカ~ポストロックのサウンド(バンドではFridge名義)で活躍し、Radioheadでのリミックスやツアー同行などでも知られることになったが、10年リリース
「There Is Love In
You」ではグッとポスト・ダブステップに寄り、UKファンキーなビートもあり話題になった。ヒプノティックなビートに彼ならではのポップなエレメント、そのバランスは過去最高ではないだろうか。

この伏線としては08年に先の
BURIALと
THOM YORKEとのコラボレーションによる12inchオンリーのシングル「Ego/Mirror」があったが、現在もCDや配信もないのは残念。
09年のBURIALとのコラボ曲「MOTH/WOLF CUB」 は
APPARAT によるDJ KICKSシリーズにミックス収録されている。
また09年XL傘下のYOUNG TURKSよりデビューしたサウス・ロンドン出身4ピース・バンド
THE XX はまさにポストダブステップを通過したプロダクションに、YOUNG
MARBLE
GIANTSやEBTGをも彷彿とさせるミニマムでメランコリックなサウンド。

ビートとサンプリングを担当しているフロントマンのジェイミーは
Jamie XX 名義で 先日亡く
なった戦う詩人、そのソウルジャズファンクを融合させたサウンドにスポークンワードを乗せていくスタイルで後世に影響を与えた"ヒップホップ界のゴッドファーザー"とも言われる
Gil Scott-Heronの遺作となってしまった『I'm New
Here』を全曲リワーク。そのブルージーで空間性のある音作りで評価を得ている。


そして6月に待望のソロ名義でのデビューシングル『Far Nearer/Beat For』を配信リリース。
まさにJames Blakeへの返答であるかのような「Far Nearer」、
エレクトロニクスブレイクビーツの「Beat For」
どちらもアルバムへの期待が高まる内容だ。
Jamie XX と FOUR TET は 今年の
FUJI ROCKに出演が決まっている。是非体験してほしい。
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所謂こうしたシーンとは距離を置き、独自の路線で人気の高いアーティストに
Shackletonがいる。
現在はベルリン在住。
00年代中頃から自身のレーベル
SKULL DISCO より盟友APPLEBLIMとの作品をリリース、
パーカッションが鳴り響くトライバルで呪術的ともいえる、まさに暗黒サウンドは、ダブステップ云々~とはまた別の響きがある。
レーベル名はカメルーンの部族の宴(先祖の骨を掘り起こして並べて踊る)から着想を得ている。
そのイメージを表した12inchのアートワークも必見だ。
またチリ出身の人気ミニマルアーティスト
RICARDO VILLALOBOS、ディープエレクトロニカMONOLAKEの
T++、ブリストル重要人物
PEVERELIST、中東トライバル・ダブ、NY"イルビエント"シーンで活動する、イスラエル生まれのパレスチナ人パーカッショニスト
BADAWIといったリミキサー陣を起用し、テクノやハウスシーンでも注目を集めていたが、12inch10枚をリリースしたあとレーベルは休止状態に。そしてベルリンに移住した。
「SKULL DISCO」のベスト盤CDは3枚リリースされているので今でも聴くことが出来る。
2009年10月、ミニマルテクノ・ハウスシーンにおいて絶大な人気のレーベル
PERLONから3枚組『Three EPs』をリリース。より洗練された唯一無二の音楽を確立。

今年になってUKの名門クラブFablic監修MIX-CDシリーズに登場。全曲自作(未発表、別ミックス)でもはやフルアルバムといっていい集大成的内容だ。

孤高のアーティストのように受け止められるが、妻は日本人らしく、日本にも2度ツアーに来ているし、飲み屋や銭湯が好きらしい。
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こうした流れを聞いていると やはりカリブやアフリカ音楽の影響
----ここ数年は特に再発やレアな音源発掘ものがクラブシーンでは続いている----
を考えざるを得ないと思う。
ただその ビートは、
大地の鼓動ビートの しなやかさや繊細さ、生命力の力強い響き、
というよりも
都市の地下の、幾分麻痺的な鼓動の響き となって表出しているのである。
あとは エレクトロニクスミュージックにおける
かつてはあった 楽観的なシンクロニシティ(共時性) への欲望。
それが今では どこか すっかり昔の出来事に聴こえてしまうくらいに
かってないほどの ズレやゆらぎが 意識的/無意識にもサウンドに
モロに 表出してしまっている、または 求められている
のは 非常に興味深いと思える。